ピアノの上達を加速させる「目標設定」術~夏こそ伸びる子の習慣~
はじめに
夏休みは、学校や習い事のペースが変わり、子どもたちが「自分のペース」で過ごせる貴重な期間です。この時期にピアノの練習をうまく習慣化し、上達のスピードをグッと上げる子がいる一方で、「なんとなく毎日が過ぎてしまった」「結局あまり練習できなかった」と感じるご家庭も少なくありません。
その違いを生む最大のポイントが「目標設定」です。
今回は、ピアノの上達を加速させるための目標設定のコツと、夏休みだからこそできる“伸びる子の習慣”について、教育心理学や現場の実例を交えて詳しく解説します。
1. なぜ「目標設定」が上達のカギになるのか
ピアノに限らず、スポーツや勉強、仕事でも「目標」があると人は成長しやすいことが分かっています。
目標があることで、やるべきことが明確になり、モチベーションや集中力が高まります。
ピアノの場合も、ただ「毎日練習しよう」ではなく、「○○が弾けるようになりたい」「発表会でこの曲を披露したい」といった具体的な目標があると、練習の質も量も大きく変わります。
2. 目標設定の基本は「小さく・具体的に」
子どもにとって「大きすぎる目標」や「漠然とした目標」は、かえってやる気を下げてしまうことも。
まずは「小さくて具体的な目標」から始めましょう。
・「今週は右手だけで2小節弾けるようになる」
・「1日1回、間違えずにこのフレーズを弾く」
・「8月末までに1曲仕上げる」
このように、「何を」「いつまでに」「どのくらい」できるようになりたいかを明確にすることが大切です。
3. 目標を「見える化」して毎日意識する
目標は立てただけでは意味がありません。
紙やホワイトボード、練習ノートに「見える化」して、毎日目にすることで意識が高まります。
・練習ノートに「今週の目標」「今日の目標」を書く
・カレンダーやチェック表を作り、できた日はシールや○をつける
・家族や先生と「今週はここを頑張る!」と宣言する
こうした「見える化」は、子どもだけでなく大人にも効果的です。
4. 夏休みだからこそできる「チャレンジ目標」
夏休みは時間に余裕がある分、普段より少し高めの「チャレンジ目標」を立てるチャンスです。
・「普段より長い曲に挑戦する」
・「苦手なスケールやテクニックを集中的に練習する」
・「家族や友達に演奏を聴いてもらうミニコンサートを開く」
・「作曲や即興演奏、アレンジに挑戦してみる」
チャレンジ目標は「できた!」という達成感が大きく、子どもの自信や自己肯定感を育てます。
5. 目標達成のための「逆算スケジュール」を立てる
目標を立てたら、そこまでの道筋を「逆算」してスケジュールを作りましょう。
・8月末までに1曲仕上げる→7月は譜読み、8月は仕上げ
・1週間で1ページ進む→1日○小節ずつ練習
・発表会までに暗譜→毎日1フレーズずつ覚える
逆算スケジュールを立てることで、「今日は何をすればいいか」が明確になり、無理なく目標に近づけます。
6. 「できた!」を積み重ねる仕組みを作る
目標達成には「できた!」という達成感の積み重ねが大切です。
・できたらシールやスタンプを貼る
・練習ノートに「できたこと」を毎日書く
・家族や先生に「できた!」を報告する
小さな成功体験がやる気を生み、「もっとやりたい」「次も頑張ろう」という内発的なモチベーションにつながります。
7. 親子で一緒に目標を立てる・振り返る
子ども一人で目標を立てるのが難しい場合は、親子で一緒に考えましょう。
・「今週はどこまで弾けるようになりたい?」
・「どの曲を仕上げたい?」
・「できたらどんなご褒美がいい?」
週末や月末には「今週はここができたね」「来週はここを頑張ろう」と一緒に振り返ることで、子ども自身が目標設定や自己管理の力を身につけていきます。
8. 目標が達成できなかった時の声かけ
目標を立てても、毎回うまく達成できるとは限りません。
そんな時は「できなかったこと」より「頑張ったこと」「続けたこと」をしっかり認めてあげましょう。
・「毎日ピアノに向かえたのがすごいね」
・「難しいところもあきらめずに練習したね」
・「来週はもう一度チャレンジしてみよう」
失敗や挫折も「成長のチャンス」と捉え、前向きな声かけを心がけましょう。
9. 目標設定を習慣にすることで得られる力
目標を立てて行動する習慣は、ピアノだけでなく人生のさまざまな場面で役立ちます。
・計画を立てて行動する力
・小さな目標を達成する自信
・失敗してもあきらめずに続ける力
・自分で考え、工夫する力
夏休みのピアノ練習を通じて、こうした“生きる力”も自然と身についていきます。
10. 夏休みの「目標設定」実践例
【例1】
目標:「8月末までに『エリーゼのために』を両手で弾けるようになる」
逆算:「7月中に右手、8月前半で左手、8月後半で両手合わせ」
【例2】
目標:「1日1回、間違えずにこのフレーズを弾く」
仕組み:「できたらカレンダーにシールを貼る」
【例3】
目標:「夏休み中に家族コンサートを開く」
計画:「毎週1曲ずつ仕上げて、8月末に発表」
11. よくある質問とアドバイス
Q. 目標が大きすぎて途中で諦めてしまいます。
A. 目標は「小さく・具体的に」分けましょう。1曲全部ではなく「1ページ」「1フレーズ」から始めると達成感を味わいやすくなります。
Q. 毎日続けるのが難しいです。
A. まずは週2~3回の「できる日」から始めてみましょう。続けることより「やめないこと」を大切に。
Q. 子どもが目標に興味を持ちません。
A. 子ども自身が「やりたい」と思える目標を一緒に探しましょう。好きな曲やご褒美、遊びの要素を取り入れてみてください。
12. まとめ
夏休みはピアノの上達を加速させる絶好のタイミングです。「目標設定」を上手に活用することで、子どもは自分で考え、計画し、達成する力を身につけていきます。
小さな目標から始めて、達成感を積み重ねること。親子で一緒に考え、振り返り、前向きな声かけを続けること。
この夏、ピアノの練習を通じて「自分で伸びる力」を育ててみませんか?
(本コラムは教育心理学・音楽教育の知見、ピアノ指導現場や保護者の体験談をもとに執筆しました。)