音楽教室 VS JASRAC――ピアノ教育最前線でいま何が起きているのか

2025年、音楽教育の現場に大きな波紋を投げかけたJASRACによる「楽曲著作権料」徴収問題がついにひとつの区切りを迎えました。本来、子どもたちや一般の生徒たちにとって音楽教室は、自由に音や表現を探究できる場。指導者もまた、次世代の音楽文化を担うために尽力しています。ですが、その現場で「著作権」の名の下に新たな負担が課されることになった現実に、大きな戸惑いや反発が広がっています。

JASRACの主張に現場からは困惑と疑問

JASRACは2017年、「楽器のレッスンや教室で使用される楽曲も著作権使用料の請求対象とする」と打ち出しました。これまではコンサートや商業興行、放送への請求が主でしたが、教育現場まで網をかける姿勢に「さすがにやりすぎだ」「音楽文化の芽を摘む行為では」との声が一気に高まりました。

教育現場としては、営利活動とは異なる「学びと成長の場」にまで経済的負担を押し付けることへの強い疑問を感じざるを得ません。「社会全体で文化を守り、未来を育む現場を支えたい」と願っている教室側にとって、この新たな集金構造には到底納得できないというのが偽らざる本音です。

8年越しの攻防と“最終合意”――法人化教室に定額負担

業界団体や音楽教育を守る会、市民の署名運動を巻き込んで続いた議論は、多くの裁判や社会的論争の末、2025年にようやく合意に至りました。内容は、「法人化されている音楽教室」に限り、大人750円/年・中学生以下100円/年をJASRACが徴収するというもの。ここに至るまでには、教室運営者・保護者・現場教員の並々ならぬ努力と声なき抵抗、現実的な妥協があったのです。

この定額制導入によって、従来の「受講料の2.5%」など複雑な仕組みより透明性は増したものの、「なぜ教育現場だけが?」という根源的な納得感は依然として得られていません。

個人事業主はこれまで通り“非課金”――救いと不安

救いなのは、数多くのピアノ教室・音楽教室が該当する「個人事業主」形態は、これまで通り著作権料が課されないことです。地域密着・親子少人数レッスンが中心の現場に過度な事務負担や経済的負担が強いられなかったことは、音楽教育界への小さな希望です。

とはいえ、今後「法人化」を強いられたり、制度が拡張されていく可能性に現場の不安は消えていません。ルールが突然変わってしまう…そんな危機感のなかで、現場教員や事業主は子どもたち・保護者をどう守っていくかに苦慮し続けています。

現場目線でのリアルな怒りと、前向きな文化推進への意志

JASRACの徹底管理体制や、金銭徴収の論理だけが先行する行政・団体の姿は、教室や家庭でかけがえのない時間を築いている私たちからすると、「文化継承の力」とは正反対のものです。しかし、ただ怒るだけではなく、私たちは今こそ子どもたちの学びと音楽の場を守るため、前を向いて行動するべきだと感じています。

ピアノや音楽は“必須科目”であるべきだ――その信念のもとに、地域活動への発信、正しい著作権教育・保護者説明、新たな経営・レッスンシステムの模索、といった現場での工夫が次々と生まれています。

今を生きる指導者・保護者・生徒みんなが「JASRACの制度に飲み込まれることなく、むしろ文化を豊かにする一翼を担える」よう、できることを重ねていきたいものです。

まとめ――それでも音楽教室は日本の未来を創る

かつてない制度変更と、理不尽な現場の苦しみ。しかし、音楽教育の熱は絶えることなく新しい世代へ受け継がれています。ピアノの参考書も、「ピアノは日本全国のすべての子どもたちの必須科目に」という願いに一層真剣に取り組んでいきます。現実の壁に立ち向かいながら、文化インフラとしての音楽教室の灯を決して消さず、明日の教育現場をともに支えていきましょう。

(文・コラム連載者)