「ブルグミュラー25の練習曲」を終えたら次は何を弾くべき?指導者が教える、レベル別・目的別の「後続教材」完全ガイド

ブルグミュラー25番修了後、次はどの教材に進むべきか?

「ブルグミュラー25の練習曲」の最後を飾る25番『乗馬』を弾き終えた時、学習者も先生も大きな達成感に包まれます。しかし、それと同時に直面するのが「次はどの本に進めばいいのか?」という問題です。

ブルグミュラーは非常に音楽性が高く、技術と表現のバランスが取れた名著ですが、その次に選ぶ教材を間違えると、急激な難易度の上昇に挫折してしまったり、逆に技術的な伸び悩みを招いたりすることがあります。

本記事では、2026年現在のピアノ教育現場のトレンドも踏まえ、ブルグミュラー修了後の「3つの王道ルート」と、それぞれのタイプに合わせたおすすめの楽譜を徹底比較・解説します。

1. ブルグミュラー修了後の「現在地」を知る

ブルグミュラー25番を終えた段階は、いわゆる「初級から中級への入り口」です。

この段階で習得できている(はずの)スキルには、16分音符の均一な打鍵(例:『アラベスク』)、左右の異なるアーティキュレーション(例:『進歩』)、和音の響きとバランス(例:『アヴェ・マリア』)、楽曲のタイトルからイメージを膨らませる表現力などが挙げられます。

しかし、多くの学習者が「指の独立(特に4指・5指)」や「古典派の形式美(ソナタ形式など)」については、まだ発展途上です。次の一手は、これらの弱点を補うか、あるいは得意を伸ばすかで決まります。

2. 目的別・3つのステップアップルート

ここからは、ブルグミュラー修了後の代表的な3つのルートを紹介します。技術を優先するのか、表現力を伸ばすのか、楽しさと幅の広さを重視するのかによって、選ぶ教材は変わってきます。

【ルートA】技術を磨く「王道・正統派ルート」

進む教材の例は、ツェルニー30番とソナチネ・アルバムの組み合わせです。最も伝統的で、確実な上達を期待できるルートであり、将来的にショパンやベートーヴェンのソナタを弾きたいのであれば、避けては通れない道と言えます。

ツェルニー30番では、ブルグミュラーでは曖昧になりがちだった音階(スケール)やアルペジオなどのメカニックを、体系的に鍛えることができます。

ソナチネ・アルバムでは、クーラウやクレメンティなどの楽曲を通じ、クラシック音楽の骨組みであるソナタ形式や、古典派特有のフレーズ感を学ぶことができます。

最近の指導現場では、ツェルニー30番を全曲律儀に行うのではなく、生徒の苦手なテクニックに合わせて10〜15曲程度をピックアップする方法も広く採用されています。

【ルートB】表現力を育む「ロマン派・叙情派ルート」

進む教材の例は、ヘラー『25の練習曲』とチャイコフスキー『子供のアルバム』などのロマン派小品です。「ツェルニーのような機械的な練習曲は苦手」という生徒に最適なルートで、ブルグミュラーで培った音楽性をさらに深化させることができます。

ヘラーの練習曲(作品45など)は「旋律的練習曲」とも呼ばれ、メロディーとそれを支えるハーモニーを意識しながら、和声感やペダリング、歌わせ方を学べる内容になっています。

チャイコフスキーやシューマンの子どものための作品集は、ロマン派特有の繊細な情景描写や物語性を備えており、音色の作り方やフレーズの呼吸を身につけるのに適しています。

【ルートC】楽しみながら広げる「名曲選・バラエティルート」

進む教材の例は、『ピアノ名曲110選(グレードA)』やギロック『叙情小曲集』などです。特定の様式に縛られず、さまざまな時代やスタイルの有名曲を弾きこなしたい学習者向けのルートです。

名曲110選のようなアンソロジー型の楽譜は、バロックから近現代までの代表的な小品がレベル順に並んでおり、幅広いレパートリーを効率よく経験することができます。

ギロックの作品は「20世紀のブルグミュラー」とも評され、現代的な響きやジャズ風の要素を取り入れながらも、基礎技術の維持・発展に役立つ練習曲として高く評価されています。

3. 「版」の選び方で上達スピードが変わる

ブルグミュラー修了後に扱う楽譜は、音符の情報量が増え、版による違いも大きくなってきます。そのため、どの出版社のどの版を選ぶかは、上達スピードや理解度に直結する重要な要素です。

例えばツェルニー30番の場合、全音の標準版は指番号や運指の指示が親切で、初学者にとって取り組みやすい一方、原典版やウィーン原典版は作曲者の意図に忠実な校訂が特徴となっています。

ソナチネ・アルバムでは、今井顕などの現代的な視点から校訂された版が注目されており、従来の誤りの修正や、現代の演奏解釈に基づいたアーティキュレーションの提案が盛り込まれています。

名曲集については、音楽之友社などの標準的な版が、収録曲のバランスや解説の充実度の面で信頼されており、家庭学習や指導現場のどちらでも使いやすい構成になっています。

4. 指導者がチェックすべき「移行期のサイン」

生徒がブルグミュラーから次の教材に移るタイミングでは、単に曲が弾けるかどうかだけでなく、身体・読譜・耳の準備が整っているかを多角的にチェックすることが大切です。

まず重要なのが脱力です。ツェルニーやソナチネに入ると打鍵数が増え、難しいパッセージも増えるため、余計な力が入ったまま練習を続けると、疲労や腱鞘炎などのリスクが高まります。

次に、楽譜を読むスピードも確認しましょう。ソナチネはページ数が多く、構成も複雑なため、読譜が極端に遅い生徒には、短い名曲集やロマン派小品を併用して読譜力を補う工夫が効果的です。

さらに、自分の出している音を「聴く」余裕があるかどうかもポイントです。テクニックの習得に必死になりすぎて音を客観的に聴けていない場合は、あえて難易度を少し下げた曲集に戻して、表現面のゆとりを取り戻す選択も必要です。

5. まとめ:一生の宝物になる「次の一冊」を

ブルグミュラー25番を終えた後の選択は、その後のピアノ人生の方向性を左右する大きな分岐点です。どのルートも正解になり得る一方で、生徒の個性や目標と合わない選択は、モチベーション低下や伸び悩みを招くこともあります。

基礎をしっかり固めたいならツェルニー30番とソナチネ・アルバム、音楽性を深めたいならヘラーやロマン派小品集、幅広く楽しみたいなら名曲集やギロック作品といった選び方が、一つの目安になります。

何より大切なのは、「その生徒が次に何を学びたいか」「どんな音楽に憧れているか」という意欲や好みに寄り添うことです。本サイト「ピアノの参考書」では、それぞれの教材についてより詳しいレビューや比較記事も用意し、一人ひとりに合った「次の一冊」を選ぶお手伝いをしています。

ブルグミュラー修了という大きな節目を、新しいレパートリーとの出会いのチャンスとして捉え、生徒と一緒にワクワクしながら次のステージへ踏み出していきましょう。